派生する箱
ニーズからの誕生
提案の幅を広げたい。それが、あるエクステリアメーカーにとっての希望でした。私たちは、まず現場の責任者とともに、どんな提案がお客様の思考を活性化させ、提案の幅を拡大していくのかを検討しました。
掘り起こされたテーマのひとつにペット関連の商材がありました。ペット産業は約2兆円規模の市場として人間社会と同じ上に衣食住のすべてに関連する商品が展開されていました。しかし、ここの商品の独立性が高く、業種間の連携を伴う商品は少なく、そこにひとつの突破口を見いだしたのです。
最近では、多くのペットが室内で暮らしています。しかし、散歩という屋外の活動も不可欠なペットに帰宅時の足洗は不可欠の要素。行動調査の結果は、中・小型犬はお風呂場で、大型犬は玄関先で足洗を行っていることがわかりました。製品コンセプトの最初の一歩が始まったのです。
ペットの足を洗うこと、これは冬の季節には苦痛を伴う作業でもあります。また、中腰の姿勢になることが多く、夜間においては危険でもあります。そのような好意の分析によって、屋外で着座して、温水で足洗だけでなく、必要であれば全身を洗い、乾燥まで行う。これらを、訴求要因として具体的なフォルムを見せることになりました。プロダクトデザインが始動したのです。
洗うことを楽しむ。
自然な姿勢でペットに向き合うための、人とペットのT型配置。冬でも気持ちよく体全体を洗える温水シャワー、夜間でも足下を照らすライト、ドライヤーを使った乾燥を行えるコンセントと収納。これが、ペットコンフォートの基本機能です。
そして、その機能を直感的に感じることのできるフォルムとするためプロダクトデザインがスタートしました。最初は、生産効率よりもフォルムをある程度優先させ、生産現場にコンセプトや意味を理解してもらいながら、しだいに制限事項やコストをにらみながら最適化していきました。
生産現場のニーズが曲面をできるだけ少なくした方が、コスト的に有利になるこ、メンテナンスを考えた配管スペースを確保したいと言う要望でした。また、営業からは施工業者への発注方法、梱包形態などの情報が寄せられ、徐々に量産化への道筋が作れてたいきました。これらの要望は数百カ所にも及びましたが、生産現場と営業部隊が一体となって市場に投入するという雰囲気が作られていったのです。
展開力を付加する
完成した量産試作を研修によって、周知徹底する作業が始まりました。営業担当者など、販売に関係するすべての人間が実物を体感し、カタログなどのツールを確認。そして営業の側面からどのような展開提案があるのかを説明しました。
ポイントは、研修計画が一般ユーザーが知る過程と全く同じだと言うこと。営業部隊が認知から、販売へのモチベーションを持つためには、まず企画側が営業部隊に売り込む、戦略的にアプローチが重要です。
また、研修で力を入れたのは、商品は単体ではなくエクステリア計画の全体に波及する点です。ペットコンフォートまでの動線を検討することで、新しいエクステリア提案のきっかけを作り、さらには室内のレイアウトにも影響することで住まいの計画全体に関与する機会があると言うことです。
最終的に、営業担当者が販売を完結するまで、モチベーションを維持するためのサポートが続きます。営業担当者が実績を積までが企画の仕事である。これが徹底されました。
その後、各展示会場を巡回したペットコンフォートは、お客様に直感的なインパクトを与え大きな反響となって返ってきた。
手の動きをみつめる A motion of a hand is gazed at.
次回は、ある文具商品の閉塞状況を破るために、新しい機能を付加するまでの課程をご紹介します。便利さの追求とコストのとの狭間の中で、現状の生産ラインを生かし、長い流通過程のどこにターゲットを絞り込むか?多くの課題のなかで参画した人々が苦悩した状況をお伝えします。